熱割れと窓ガラスフィルムについて|フィルムの選び方と熱割れリスクを最小限にする方法
窓ガラスフィルムと熱割れの関係
窓ガラスにフィルムを貼ることのメリットとデメリット、そしてガラスの熱割れリスクについて、専門的かつ詳細に解説します。
当社は建築窓ガラス用フィルムの施工販売を専門に行っております。インターネット上には誤解を招く情報も多く存在します。そのため、私たちは「なぜそうなるのか?」という背景や理由も交えて、皆様に正確で信頼性の高い情報を提供する目的で本記事を作成しております。
熱割れとは何か?
熱割れは、ガラス製品の大敵であり、窓ガラスでも注意しなければならないトラブルの一つになります。特に、窓ガラスにフィルムを貼ると、温度の変化により熱割れが発生する可能性が上がりますので注意が必要です。
この現象は、ガラスの部分的な温度差によって引き起こされます。直射日光を受けた部分のガラスは温度が上昇し、膨張します。しかし、ガラス周辺のサッシに埋め込まれた部分や、パッキン等の部材に触れている部分は温度が上昇しにくいです。この温度差により、熱応力が発生し、熱割れのリスクが高まります。
窓ガラスフィルムを施工することで、フィルム施工前のガラスより熱吸収率が上がり、直射日光が当たっている部分と、サッシに埋め込まれた部分の温度差が大きくなります。そのため、基本的には窓ガラスフィルム施工後のほうが、熱割れのリスクは大きくなります。
熱割れリスクを高める要素
ガラスやフィルムの種類によって熱割れのリスクがどのように変わるのか、その要因を深掘りします。
ガラスの種類と熱割れリスク
ガラスの種類によって、熱割れリスクは異なります。
例えば、強化ガラスは許容熱応力が強く、熱割れが起こりにくくなります。一方で、ワイヤーが入った網入りガラスや複層ガラス(ペアガラス)は熱割れリスクが高くなります。また、ガラスは薄いものより厚みのある方が、ガラス内部に温度差ができやすくなるので割れやすくなります。
一見、網入りガラスはワイヤーが入っていて丈夫そうに見えますが、むしろ許容熱応力が小さいため熱割れのリスクが高いガラスになります。網入りガラスには金属の網や線が入っており、金属はガラスよりも温度が上昇しやすい特性があります。さらに、金属の熱膨張率はガラスとは異なるため、熱割れのリスクが高まります。
※許容熱応力とは?ガラスや材料が安全に耐えられる温度の変化の度合いを指します。例えば、冷たい氷を入れたグラスに熱いお湯を注ぐと、グラスは突然の温度変化に耐えられずに割れることがあります。このとき、グラスが耐えられなかった温度の変化が「許容熱応力」を超えたと言います。簡単に言うと、許容熱応力は「ガラスが安全に耐えられる温度の変化の限界」のようなものになります。この限界値を超えると、ガラスは割れるリスクが高まります。
窓ガラスフィルムの選び方
窓ガラスフィルムのタイプ、種類によっても、熱割れリスクは異なります。黒っぽいカラーフィルムは熱を吸収しやすく、熱応力が生じやすくなります。また、色がついていないものでも、遮熱(近赤外線を吸収する)タイプのフィルムの場合、熱がこもりやすくなります。そのため、透明に近いフィルムでも、遮熱タイプの場合、熱割れリスクがありますので、注意が必要です。
また、窓ガラスフィルムを施工する窓ガラスによっても特性が違うため、熱割れリスクを最小限に抑えて施工を行う場合には、窓ガラスフィルムを理解している業者への相談がおすすめの選択肢になります。
熱割れの具体的な現象とその原因
耐熱ガラス製でないガラスコップに熱湯を注ぐと、そのガラスは割れることがあります。この現象は、熱湯が直接ガラスに触れた部分が瞬時に高温になるためです。
しかし、直接熱湯が触れていない部分は、温度が伝わるまでの時間差が生じるため、温度差ができます。この温度差が原因でガラスが割れることを「熱割れ」と呼びます。
建物における環境を考慮すると、冬の午前中に外気温がマイナス1度、室内温度が24度の場合、室内外の温度差は25度となります。一方で、夏には外気温が35度で室内温度が20度の場合、温度差は15度となります。このような温度差が大きくなると、熱割れのリスクが増加します。夏でも熱割れのリスクは存在しますが、環境による温度差やその他の条件が組み合わさることで、実際には冬の方が熱割れが起こりやすいと言えます。
熱割れリスクが高いガラス
以下が熱割れリスクの高いガラスの一覧になります。「熱を吸収しやすい」「劣化している」「厚みがある」が熱割れのしやすいガラスの条件になります。
- 網入りガラス
- 複層ガラス
- LOW-Eガラス
- 劣化したガラス
- 熱線吸収・熱線反射ガラス
- 厚みのあるガラス
熱割れリスクが中程度のガラス
熱を吸収しやすい特性はありませんが、熱に強いというものでもないため、中程度のリスクになります。
- フロートガラス
- 型板ガラス
熱割れリスクが低いガラス
熱に強いガラスになります。窓ガラスフィルムを施工しても熱割れがしにくいと言えます。
- 強化ガラス
- 倍強度ガラス
熱割れを引き起こす要因
熱割れの原因となる要因には、以下のようなものがあります
- シールの貼り付け
シールをフィルムをガラスに貼ると、その部分の吸収率が上昇します。シールを貼った部分が局所的に暖められることにより、ガラス内部の温度差が大きくなり、熱割れのリスクが増加します。
- 厚いガラス
ガラスを厚くすることは、風や重力などの外力に対しては有効ですが、熱割れに関してはリスクが増加します。厚いガラスは日射熱の吸収率が上がり、温度が上昇しやすくなるためです。
- カーテンやブラインドの存在
ガラスの近くにカーテンやブラインドがある場合、これらからの反射(輻射熱)によってガラスが吸収する熱が増加します。また、ガラスとカーテンの間に熱がこもりやすくなり、ガラスの温度が上昇しやすくなります。
- 冷暖房器具の位置
冷暖房器具からの風が直接ガラスに当たる位置に設置されていると、ガラスの室内外の温度差が大きくなりやすく、またガラス面内の温度が不均一になることで、熱割れのリスクが高まります。
- 木や電柱の影
ガラス面に影ができると、温度分布が均一でなくなります。このため、影がない場合と比較して、熱割れが起きやすくなります。
- ガラスの端部品質
ガラスの端部にヒビや欠け、網入りガラスの場合は錆びがあると、その部分の強度が大幅に低下します。そのため、わずかな温度差でも熱割れが発生しやすくなります。
- ガラスの大きさ
ガラスのサイズが大きいと、ガラス内に生じた温度差による膨張量(ガラス全体のひずみの大きさ)も大きくなります。このため、大きなガラスほど熱割れのリスクが高まります。
- サッシの色
濃色のサッシは熱を吸収しやすいのに対し、淡色系のサッシは熱の吸収が少なくなります。つまり、濃色サッシは温度が上がりやすいため露出しているガラスに温度が近く、淡色系のサッシは、のみこみ部分のガラスの温度が低くなります。このため、淡色系のサッシの方が熱割れのリスクが増加します。
- ガラスの固定方法
サッシへのガラスの固定方法によっても熱割れのリスクが変わります。サッシとガラスの間の断熱性が高い方が、熱割れのリスクを低減するとされています。また、稼働サッシのほうが熱割れリスクが低く、FIX窓(固定されて動かないサッシ)のほうが熱割れリスクは高い傾向になります。
方角による熱割れリスクの違い
- 北向きのガラス:熱割れリスクが低くなります。直射日光が当たらないため、温度差が小さくなるためです。
- 東向きのガラス:熱割れリスクは中程度になります。
- 西向き、南向きのガラス:熱割れリスクは高くなります。
熱割れを予防する方法
熱割れを未然に防ぐための具体的な手段についてをご説明いたします。
事前の熱割れ計算の重要性
熱割れのリスクを事前に知るためには、熱割れ計算を行うことが推奨されます。これにより、ガラスの種類や日射の状況、フィルムの種類などの複合的な要因を考慮して、熱割れリスクを予測することができます。この熱割れリスク計算は、要素が複雑で、見落としも起こりやすいため、専門業者への依頼をおすすめします。
この熱割れ計算は、太陽光や周辺環境の変化など、不確定要素により数値を固定することができないため、あくまでも試算(おおよその数値目安を求めるもの)で、保証値ではありませんが、リスクが高いのか、低いのかを判断するための目安として活用することができます。
正確な情報の収集
熱割れ計算を行う際は、日射の状況やガラス、サッシの状況などを正確に把握し、具体的な数値に反映させることが重要です。そのため、可能な限り正確な情報収集が求められます。また、窓ガラスフィルム施工時には想定していなかった、季節の変化や家具の配置、周囲の建物の建築などによって温度差が発生し、リスクが高まることも考慮する必要があります。専門業者へ依頼する際には、現状の情報だけでなく、今後考えられる変化も伝えておくと良いでしょう。
まとめ
ウインドウフィルムの選び方や熱割れリスクについての知識は、安全かつ効果的にフィルムを使用するためには欠かせないものです。熱割れリスクを最小限に抑えるための方法や、事前の熱割れ計算の重要性などを理解し、適切な対策を講じることで、窓ガラスの安全性と快適性を高めることができます。
当社、ファブラス株式会社(サービス名:スリーエックス)は、建築窓ガラス用フィルム施工の専門店として、日本ガラスフィルム工事業協会の会員として正しい知識と技術を持っております。6年間の事業運営を通じて、自社の職人(ガラス用フィルム技能士(国家資格者))が施工を行ってきました。2022年度実績では、年間に400件以上の施工を行い、分譲マンションやタワーマンション、商業施設、ブランド店、コンビニ、病院など、多岐にわたる施設での窓ガラスフィルム施工の実績があります。
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